コロナウイルスでもテレワークできない大企業のジレンマ
コロナウイルスの感染拡大はいつ収束するのでしょうか。アメリカのニューヨーク州では感染者が6万人を超え、全米の半数はニューヨークという事態に陥っています。私もニューヨークの大学を卒業しており、友人の多くがニューヨークに住んでいます。心配で仕方がありません。
日本においても感染者数は日々増えており、決してヨーロッパやアメリカを対岸の火事と見てはいけません。外出をできる限り自粛し、仕事はできる限りテレワークにするなどして、感染拡大の防止に努めていかねばなりません。
しかしながら、一見テレワークへの障壁が低そうな大手企業こそテレワークをし難いというジレンマがあります。私がお世話になっている某IT大手企業の事例を紹介したいと思います。
制度はあるのにパソコンがない
今回お話する企業は数年前からテレワーク制度を導入しており、働き方改革として、主にプロパー社員を対象に運用してきました。
コロナウイルスの感染拡大という影響を受け、プロパー社員だけでなく、他社から派遣されている人も対象に広げました。元々制度は存在したため、対象者を広げるだけの対応で、比較的容易であったと言えます。
しかしながら、制度上はテレワークが可能で、申請して承認されてもテレワークができません。テレワーク用のパソコンが足りずテレワークができないのです。
この企業ではテレワークをする条件として、会社が貸与したパソコンのみ社内システムに繋げて良いとしていました。そのため、個人用のパソコン等を使用することは許されておらず、結局テレワークの権利が得られたのにテレワークができないという人が多く出ました。
セキュリティの問題
次にセキュリティの問題です。前述の会社が貸与したパソコンでしかテレワークをしてはいけないというルールもセキュリティの観点ですが、その他にも条件を設けている場合があります。
努力義務ではあるものの、在宅で働く場合は家族にすらパソコンの画面を見せてはいけない取り決めになっています。
また、社員によっては自宅でのテレワークは難しく、シェアオフィスやカフェ等でテレワークをしたいという要望がありますが、これも会社のルールでは許されていません。
そのため、会社からパソコンが貸与され、且つ自宅でのテレワークが可能な人だけがテレワークができる、という結果となってしまっています。
オンプレミスの運用が必要
大きな企業であれば、部署によってオンプレミスでシステムを保有しているところがあるかと思います。
重要なシステムの場合は24時間365日の監視や運用が必要となり、いざトラブルが発生すれば迅速に対応しなければならないため、テレワークができないといった話もあります。
この場合は要員を交代するなどして、順番にテレワークをすることは可能化も知れません。しかし、常に一定数の要員を配置しなければならない運用の現場では、少々難易度が高いでしょう。
テレワーク環境がスペック的に間に合わない
企業によって様々なテレワークの方法をとっていると思います。
例えばシンクライアントのパソコンを社員に貸与している場合、おそらくVPN等で会社のシステムに接続して、RDPするなどしてDaaS環境にアクセスしていたりすると思います。
そのDaaS環境の提供元が自社であれ他社であれ、一気に大人数の人が新たに利用しようとすると、ネットワークの帯域的にも、サーバのスペック的にも、かなりの負荷が掛かってしまうことが容易に想像できます。
まとめ
企業がテレワークに踏み出せない、あるいは踏み出したけど広げられない理由は様々だと思います。
大手企業ほど制度や費用の面から、テレワークの導入が容易なのではないかという人がいますが、大手企業は大手企業なりに導入が難しいのです。
コロナウイルスは全く好ましくありませんが、こうなってしまった今、日本の働き方改革が一層進むことを祈っています。