PMBOKの人的資源(組織)管理とは何か噛み砕いて説明する
組織管理や人的資源管理と呼ばれますが、この記事では人的資源管理と統一させて頂きます。ちなみに英語ではHuman Resource Managementなので、人的資源管理の方が和訳的には近いかも知れません。
人的資源管理とはその名の通り組織、つまり人の集まりを管理します。主な目的はプロジェクトのパフォーマンスを上げるためであり、計画や人の調達と管理、そして教育と、管理すべき対象は広いです。
人的資源管理におけるプロセス
人的資源管理には主に下記の4つのプロセスがあります。
- 人的資源マネジメント計画(Plan Human Resource Management)
- プロジェクトチーム編成(Acquire Project Team)
- プロジェクトチーム育成(Develop Project Team)
- プロジェクトチームマネジメント(Manage Project Team)
これらのプロセスを実施することで、プロジェクトチームやそのメンバをマネジメントしていきます。
人的資源マネジメント計画
他の知識エリアでも同様ですが、まずは計画をするところから始まります。人的資源マネジメントの計画では、要員の役割を決めたり、その要因の調達を行います。また、必要に応じて育成の計画を立てます。
会社や業務で育成というと若手社員を育てるというイメージがあるかも知れませんが、プロジェクトマネジメントという観点では、必要な人に必要な知識をつけてもらう、使用するツールやソフトウェアの使い方を覚えてもらう、開発環境の使い方を覚えてもらうなど、必ずしも若手社員や経験の少ない要員への教育ではありません。
マネジメント計画の段階でよく使われるのはRACIチャートでしょう。RACIチャートとはResponsible(実行責任)、Accountable(説明責任)、Consult(相談対応)、Inform(情報提供)といった役割を要員ごとに割り当てます。
また、この人的資源マネジメント計画の成果物としてマネジメント計画書を作成します。
プロジェクトチームの編成
全プロセスの計画工程で作成した計画書に基いて、組織の内外から要員を調達します。プロジェクトに必要なスキルや知識を持った要員を集めるために、予めキーパーソンとの交渉が必要になります。例えば、スキルの高いエンジニアを派遣してくれる企業や、同じ社内でも、必要な人材の上司などと交渉しておきます。
バーチャルチームと呼ばれたりもしますが、遠方にいる要因をチームに組み入れることもあります。その場合は、直接顔を合わせることが少なくなってしまうため、どういう方法でコミュニケーションをとるか等も注意して決めておく必要があります。
プロジェクトチームの育成
前述しましたが、プロジェクトマネジメントにおける育成とは、必要な要員に必要な技術・知識をつけ、プロジェクトのパフォーマンスを上げることです。
要員1人1人の能力を高めると同時に、チーム全体のパフォーマンスも上げるよう努めます。具体的には、チームのメンバ同士が信頼しあったり、噛み砕いて言うと、仲良く協力し合ってプロジェクトを完遂できるようにします。
代表的なモデルとしてタックマンモデルというものがあります。これはチームの形成過程を5段階に分けたモデルです。人的資源マネジメントを任せられたプロジェクトマネージャは、今そのチームがどの段階にいるのか良く把握して、より適切な方法を実施していくことが求められます。
私の経験ですが、人の入れ替わりが激しい部署では、形成期と混乱期を行ったり来たりしており、いつまでたっても職場全体の雰囲気は良くなりません。その中でも経験の長い者同士で個別のチームを作り、そこだけ機能期のような雰囲気になるという、事実上の部署内分断というのもありました。
プロジェクトのような期間限定的なものだけでなく、定常業務を行う部署でさえこのような状況が生まれるのですから、プロジェクトのような時間が限られている状況下では、より一層重要度が増すところだと思います。
プロジェクトチームのマネジメント
上述の他のプロセスを実施し、その効果やパフォーマンスを監視します。そして課題を解決していくのが、このプロジェクトチームのマネジメントのプロセスです。
チームは様々な人が集まって形成されるため、ほぼ間違いなく衝突が生じます。衝突とは英語でConflictと言いますが、日本語でもコンフリクトと呼んだりします。プロジェクトチームのマネジメントではこのコンフリクトの管理がとても大事になってきます。
コンフリクトが発生した際は、プロジェクトマネージャだけでなく、チーム全体が認識することが大切です。チーム全体で認識をした際も、当事者だけの問題とせず、チーム全体として解決していく方法を考えていくことが最重要です。
避けて通れない人間関係
プロジェクトである以上、と言うより、会社の一員として働いている以上、人間関係は避けることができません。集団で、チームで仕事をする以上、様々な人が集まって活動するので、時に衝突があっても致し方ないでしょう。
その観点から、この人的資源マネジメントのような考え方は、プロジェクトマネージャのみならず、プロジェクトメンバや一般社員も共通で知っておいて欲しいことのひとつだと思います。